ミチクサ先生

日経に連載中の

標題小説がとても面白い。新聞の連載小説は(「私の履歴書」なども含めて)、面白くないと途中で読み止めて(翌日から)もう読むことはない、終わるまで紙面のそのスペースが自分に用のないものとなってしまうから、毎日の楽しみがあるというのは、日々の生活がその分、豊かになって嬉しい。

作者の伊集院静氏は、3年前にも「琥珀の夢」と題したサントリー創業者鳥井伸治郎氏の伝記を日経に連載していて、この時も最初しばらくは追いかけていたのだが、途中離脱。。。

── したのに対し、今回は、漱石が主人公というのにまず大きな安定感。開始から4ヶ月、飽かせることなく読ませる。氏には「ノボさん 小説 正岡子規と夏目漱石」という作品もあるくらいの、子規にはとても思い入れがあるようで、ちょうど今、子規と漱石の友情の芽生える場面、2人の人間味溢れる交友の情景が子細に語られている。

今回は漱石が主役なので、この先はまだずっと長いはずながら、今が一番面白い「青春小説」の頃かもしれない。以前にも「文学の才能を認め合っていた2人の青年の日々は、日本の近代文学に豊かな実りをもたらした。」記事の紹介を書いたことがあるが、学生時代の交友、友人というのは本当にいいものだね。自分も(レベルはさておき..)学生時代に受けた友人からの影響がその後の人生に非常に大きい。

作品名で検索したブログに、漱石が双極性障害だったという紹介もあった。実際、漱石の作品も「猫」や「坊つちやん」の明るさが「三四郎」で陰が差し、名作「こころ」はどっぷり暗い。まだ今のように「うつ」という表現が一般的で無かった頃から神経症(神経衰弱)やノイローゼという言葉で必ず評されていたのが有名過ぎるくらいだから本当なのだろう。

佐藤優氏によれば、「坊つちやん」で既に「組織と調和できずに飛び出す」人間を描き、その後はメンタルの不調で身動きが取れなくなる人物を描いているという。それでも、というかそれゆえに読み継がれているのが漱石の作品。この後、伊集院氏がどう描いていくのか楽しみにしている。

伊集院静「ミチクサ先生」:日本経済新聞


 

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