三月の招待状

角田光代(2008年刊集英社)

2011/05/20読了、2011/05/29メモ

男女5人の愛と青春の旅立ち

大学を卒業して34歳になる今も仲良しにお友達な男女5人組。傍目には未だ学生ごっこを続けている彼らの、愛と青春にしがみついているのか、求め続けているのか、あるいは今、初めて得ようとしているのか、のへんてこりんなストーリー。

男2人の方はまあ脇役、あくまで女3人の揺れ動く──なんて優雅なもんじゃない、愛憎入り乱れ渦巻く──心理を、そこは著者の得意な、いつもどおりのさばき方で俎上にのせて差し出す。とにかくこの人は言外の嫉妬を描くのがうまい。

いかにも小説的な、あり得ない、でもあっても不思議ではないところが面白くて、かつ読み始めると止められないのが角田マジック。洞爺湖マラソンへ出発する前に読みさしで行けそうにはなかったので、マラソン前の大切な睡眠時間を削って前日夜に読了。

一番、まともに書かれている男が、突然、信じられない関係になった仲間の男女二人を称して、一人の女は青春を今、がつがつ取り戻そうとしている「やり残し症候群」、男の方はモテにモテまくった過去にずっとすがっていたい「昔の栄光症候群」というのが、言い得て妙。

しかし、それは誰かのことを揶揄しながら批判する側の者にも、同じように有する症状。

いつまで経っても大学時代の残像をひきずっている、卒業しきれずに学生ごっこを続けている彼ら。読みながら僕もすぐに思い起こしていたのは、大学時代に読んだ小此木啓吾の「モラトリアム人間の時代」。

僕自身、当の大学時代に身につまされた本だったし、34歳どころか44歳になる今も同世代は同窓会~ラブ・アゲイン~的なドラマになったりするし、これはもうどの世代にもあり得る恥ずかしさというか。

同窓会に代表される、仲間内でしか通用しない、自己完結的で閉鎖的な世界は、そのルールを知らない他者からすれどうにもば白けてしまうのだけれど、でも人間は何よりそこで輝いていた我が青春を確認し続けられるもの。恥ずかしさも甘えも許される仲間の中で、青春が色褪せてしまわないように、時々、事件など起こして青春を確認したいという意味でも、この手の物語は永遠に小説やドラマや、また現実の題材となりうるのだろう。

満足度:★★★★


 

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