間宮林蔵

Str.Mamiya(seto)1808

19世紀初頭、世界地図の中で唯一謎の地域であった樺太。長く半島と信じられていた樺太を、苛酷な探検行の末に島であることを確認し、世界地図の地名に日本人としてただ一人名前を刻まれた間宮林蔵の生涯を描いた作品。

例により、行間、紙面から著者吉村昭氏の歴史の事実、真実を追い求める執念が伝わってくる。以前読んだ「破獄」や「熊嵐」も北の地の寒さ凄まじい内容だったが、今度は江戸末期、東北諸藩の武士が蝦夷地勤務を命じられて命を落とすことも度々だった当時、そのさらに北方の未開、未知なる地に赴き死の危険をかいくぐる内容が、読んでいて身の毛がよだつ、背筋が凍るような恐ろしさ。

没後に命名された「間宮海峡」の、その発見だけでも充分過ぎる内容が実は作品の前半に過ぎず、後半は、世界の中での日本ということに否が応でも目を向けざるを得なかった幕末期の林蔵と幕府との関わり、シーボルト事件等々もからめた一つの作品にして非常に多彩な歴史小説になっている。

作品の発表は1981-82年。著者は、その頃にもまだ間宮林蔵の知られないことの多さに関心を抱いて調べていったという。林蔵の発見後もロシア人に広まらなかったこと40年、間宮海峡の名称が世界に認められるのも70年以上かかったことも記されており、北方四島やこの地の歴史の深さ、難しさを思わせられた。

北方領土問題~今~ 1.北方領土とは何か? 北方対策本部 - 内閣府

この本を読んだのは、東京理科大前理事長の藤島昭氏が紹介していた「人生に二度読む本」(城山三郎、平岩外四)の一編に挙げられていたから。確かに二度、三度読んでも簡単でない、幕末期の政情や世相やが込められている。


 

  Related Entries


Message

メールアドレスが公開されることはありません。