ライムライト

人生に必要なのは・・・

「人生に必要なのは勇気と想像力とサムマネー」──僕の大好きな言葉だと2006年目標の中で触れた。また、完走記・防府読売マラソンの最後もこの言葉で締めた。いうまでもなくチャップリン主演、監督の映画『ライムライト』のシーンに出てくる有名なセリフである。

ところで、完走記・防府読売の最初で僕は「困難から逃げてはダメだ」という小泉首相の言葉について述べたが、今度は、一昨日の国会で小泉首相がチャップリンのこの言葉を引用したという。

小泉首相は26日の衆院予算委員会で、英国の喜劇俳優、チャールズ・チャプリンの言葉を引用し、小泉改革が目指す社会像を披露した。

公明党の上田勇氏への答弁の中で、首相は「チャプリンの映画の一節だが、人生大事なものは、夢と希望とサム・マネー(ある程度のお金)だ。ビッグ・マネー(大金)はそれほど必要ない。それぞれがサム・マネーを稼ぐことが出来る社会が大事だ」と語った。

(2006年1月27日付け読売新聞)

愛、勇気、希望・・・

あまりに有名なセリフなので、至る所で使われている。「困難から・・・」について触れたら今度は逆で、面白い偶然だとは思うのだが、あれ? と思ったのは「夢と希望と・・・」になっていること。

元々が英語なのだから、前後の文脈から日本語に置き換えるとき、色んな翻訳、意訳があってかまわない。似たようなものだといえばそれまでだが、それにしても「勇気と想像力」と「夢と希望」とではだいぶ違ってくるのではないか。そう思ってネットで検索してみると、色々な組み合わせで使われているようである。

  • 勇気と想像力とサムマネー
  • 勇気と希望とサムマネー
  • 夢と希望とサムマネー
  • 夢と勇気とサムマネー
  • 愛と希望とサムマネー

・・・・・・

courage,imagination, and...

僕がこの言葉を知ったのは高校時代、英語IIBのテキストからである。他にタイタニック号についても面白く描かれていたのを覚えているが、どこの出版社だったかは覚えていない。授業ではさらっと通過したくらいのように記憶しているのだが、それでも僕の心には突き刺さった。いい言葉だなあ、とすぐに胸の中に入り込んできた。その後、NHK教育の「名画劇場」で本編を見てさらに虜になり、何度もビデオを繰り返し見ながら20年を経て今に至っている。

その後、生命保険会社のCMや郵便貯金の新聞広報など、いろんな場面で使われている、それら翻訳、通訳の仕方に数パターンあることは気付いていたから、僕も原文がどうなのかはずっと気になっていた。英語の教科書は"courage,imagination and some money"くらいだったのではないかと思う。全く確証はないが、これが一番、リズムがよくてしっくりくる。ずっと「勇気と想像力とサムマネー」で信じて疑わなかった。

今の僕は、映画の中でチャップリン扮するカルヴェロの言葉(英語)を聞きとる耳を持たないので、これまたネットで調べると(便利な世の中になったものである)──

Yes, life is wonderful, if you're not afraid of it. All it needs is courage,imagination, and a little dough.

やっぱり「勇気と想像力」で間違いなかったのだ、と思うと同時にサムマネーじゃなくて、a little dough については初めて知った。"dough"は俗語表現らしい。本当にちょっとの、わずかなお金、ということを強調したかったんだろう。さすがに英語の教科書ではそのまま載らなかったことも理解できる。

このページも本来なら「映画館」のジャンルに分類すべきだが、「本棚」にしているのは、久しぶりに本の方を手に取ってみたから。本、といっても、もちろん、これはチャップリンの作成したシナリオと映画が原作で、それを小説化したもの。これもずっと昔の大学の頃、古書店で購入したもので、これによれば、当の箇所は──

「人生はそれを恐れなければ、ひどく素晴らしいものなんだよ。人生には勇気以外の何物も必要じゃない。それに想像力だ。・・・・・・そうそう、そのうえに、お金をちょっぴりな」

今となっては訳も直訳過ぎる気はするが、映画のセリフ(原語)に忠実になっている。

勇気

何かを説明するのに3つの例を挙げるのはディベートやプレゼンの鉄則。ただ、普通なら一番、大切なものを最後にもってくるところだが、この言葉は最後が「ちょっとのお金」という、一番、大切でないもの。つまり、3番目に否定的なものを置くことで逆に前の2つを強調させている。それゆえに「少しのお金」の前2つには何を置いてもマッチする。

製作、監督、原作、脚本、音楽、主演・・・を例によって1人でこなしたチャップリンの多才さはセリフ一つとってもさすがで、見事というほかない。映画も言葉も永遠に残ってゆく。

いずれにしろ、この映画のキーは、チャップリンが訴えたかったのは「勇気」である。カルヴェロがテリーを励まそうとした、後にはカルヴェロ自身がテリーに言い返された、何より大切なのが「勇気」。「夢と希望」ももちろん、いいフレーズだけれど、今回ばかりは小泉首相の引用に異議あり。首相の言葉は、本意が「サムマネー」の方にあったにせよ、肝心のキーワードが違っては、偉大なチャップリンの名作が少し、傷ついてしまわぬか。もっとも、今はこの人、カルヴェロ演じた「道化師」ならぬ「独裁者」に近いから全てが許されるのかもしれない。

逃げないで、恐れないで、踏み出そうとする勇気、それから、物事をじっくりと考える力、相手を思いやる心(イマジネーション)、それとちょっぴりのお金。人生を支えてくれる言葉である。

満足度:★★★★★

「脚がなくては踊れないわよ」

「わたしは腕のない男を知っている。でも彼はヴァイオリン協奏曲を弾くんだ。やつは自分の脚でヴァイオリンを弾くんだよ。ただきみは、闘おうとしないだけなんだ! 人生を降りちゃってるんだ。いつも病気のなかで、死のなかで、自分にブツブツいっているんだ! しかし、死と同じように人間には避け得ない事実もあるんだ。"生"なんだよ。人間の生なんだよ。この宇宙を動かし、地球を回転させ、樹々を育てている力を、考えて見給え、同じような力が、きみのなかにもあるんだ。少なくとも、勇気は持つんだよ。そして自分でそれを使おうという心がけを持つんだ!」


 

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