くまちゃん

角田光代(2012年刊新潮文庫)

2012/03/27読了、2012/04/17メモ

恋の整理

裏表紙の紹介文によると

ふる/ふられる、でつながる男女の輪に、学生以上・社会人未満の揺れる心を映した共感度抜群の「ふられ」小説。

くまちゃん

くまちゃん
著者:角田光代
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ということで、45歳のいいおじさんがタイトルも表紙のイラストもかわいらしい、そんな恋の小説なんて読むなよ~という感じでもあるのだが、もちろんそこは恋だけでない仕事も同等の比率で、かつ、連編小説としての各話で失恋をテーマに描かれるのは女と男が半々ずつ、とタイトルからもたらされるイメージとまるで違ってなかなかに面白いのだ。

角田さん自身、この雑誌連編を書き上げたのが42歳前のこと。就職すると無責任な時間がどんどん遠ざかってゆく、自由をどんどん手放してゆく。もう学生時代の延長でないことは自覚しているが、かといってその残影を断ち切れないでもいる。

「三月の招待状」もそうだったし、個人差や世代間の差もあるかもしれないが、過去への郷愁と悔悟とが未来への不安につながっている、そんな不安定な今、に戸惑うのは誰の身にもあるはずのこと。それがまた一昔前と違い、二十代のことでなく、三十代も終わりになっても──といった具合に。

その誰の身にもあるはずのことを、小説という題材を使って、この小説は実は角田さん自身の意思が強く表れている、決意が伝わってくる。

「キャリアも無駄になるしお給料だって馬鹿みたいに減るだろうけど、私はもう知ってるんだもの、地味とかみみっちいとか、キャリアとかお給料とか、人生になーんにも関係ないんだって」

なんだこのチビ。何言ってんの。目の前に手ぬぐいが差し出される。それでようやく、自分が泣いていることに久信は気づく。なんだよ手ぬぐいって。ハンカチだろう、ふつう。

満足度:★★★★


 

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