紙の月

角田光代(2012年刊角川春樹事務所)

2012/07/11読了、2012/07/14メモ

得たのは安堵か絶望か

紙の月

紙の月
著者:角田光代
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最近、ここに掲載できているような読書は角田サンものばかり。本当はもっとベストセラーなハウツーものなど読んで処世術を身に付けた方がいいんだろうが、わずかな読書なら楽しい方が、という基準で続く角田ワールド。

図書館で長く待たされた3月最新刊(読み終えて奥付の発行日にニヤリ) ── だったが、読んでる最中に4、5、6、7月と毎月のように新刊の出る著者の精力ぶり。男性角田ファン、角田男子(だんし)というのもあれだが、飽きずに愉しませていただける。

日経書評(2012年5月6日)を担当された池上冬樹氏によれば、犯罪を積極的に扱うようになった著者の

現実と非現実の間で精神の闇を抉るあたり

が純文学作家ならではの鋭さをもつという。

僕自身がよく読むのも、普通には人が避ける、分かっていながら目を背けている悪意と憎悪といった人間の業を隠さず表面にあぶり出すところが痛快なゆえで、僕がよく読んでいるといって決して人に勧めるものではないのだが、なかなかに描かれない人間の本性に迫っているからこそ、多くの人を引き付けていることも間違いない。

今回は1億円を横領した銀行の契約社員を主人公として、金(と男)という、古今東西にあるテーマでいて、途中、主人公の梨花に語らせるように、だれもがそれの多寡によって、ふわふわした善意に守られるか、あるいは吐瀉物のように放置し、悪意をまき散らかすかに分かれてゆくことを知っている社会の現実である。

すぐに「火車」を想起するような、題材自体はよくあるものでいて、しかし、現実社会でも毎日のように好奇な事件は起きている、その犯罪者も極悪非道人なわけではなく、その犯罪に至った日々の生活はごく普通のものであった、些細なズレや小さなきしみが偶然という触媒で大きくなったにすぎないという解明が必ずにあるのだろうことを思わせる。

満足度:★★★★


 

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