この父ありて/梯久美子

日経土曜紙面

詩歌教養面、というか読書面の1ページ前のコーナー。「日本人の心に刻まれる作品を残した娘たちとその父のドラマを、昭和という時代とともに描いていく」というテーマでの新シリーズ第1回。

ノンフィクション作家の梯さんというのは、キリッとしまった感のある論調の人という印象があって(ノンフィクションライターというのがそういうものかもだが)、名前を見ると読んでみようという気になる(今は毎日新聞のコラムも担当されているよう)。

昨日までの初回はベストセラーになった「置かれた場所で咲きなさい」の著者、渡辺和子さんを取り上げていて、計5週、氏の人生を淡々と静かに紹介。著作を読んだことのない自分には、全て初めて知る壮絶な内容だった。

二・二六事件で叛乱軍に43発の銃弾を浴びて血まみれになった父を目の当たりにしても軍人の娘として教えられたとおり泣かなかったこと、29歳での受洗・・。最終回は、事件後50年、ずっと迷っていた、刑死した15人の青年将校の法要に、50年の節目に決心して出席したこと。

「正直に申しまして、敵を許す、というキリスト教的な心がけがあって出席したわけではありません」

和子が考えたのは、父なら何と言うか、ということだった。「きっと、出なさいと言うと思いました。軍人の娘は背中を見せてはならない、逃げるな、と」


 

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