ジョゼと虎と魚たち

田辺 聖子(角川文庫)

2013/09/25読了、2013/09/26メモ

もう来んといて


8年前にDVDで観た後、確か文庫も読んだはずなのだが、思うところあってまた思い出していて、飲んで帰った昨夜、思い切り眠かったけれど短いのだからと、ふと表題作のみ読み返してみた(9編の短編集)。

映画の良さの印象が強いので8年前の記憶になお引きずられる、映画より先にさらの状態で原作を読んでみたかった気もするが、小説の良さも当然に素晴らしい。

ことばの持つ力といっては陳腐な言い方だが、文章による描写のしなやかさ、美しさが圧倒的で、何度も読み返してしまう数行、数カ所あり。映像では表せない心理というか心の襞というか、あるいは何気ない行為というものを、見事にさらっと書いてしまわれているところがすごい。

それから、外的なこととして今回、初めて知ったのは、一般には10年前(2003年)の映画があまりにもポピュラーなのだけれど、原作自体の単行本が出たのはずっと古く27年前の1985年なのだということ(初出は1984年)。文庫化が1987年。

うわ、僕が大学にいたときに単行本も文庫も出てたんかいな、と今さらに衝撃を受けた感じ。映画を観たときは、若い男女の物語、というふうにちょっと遠くを昔日を振り返るような見方をしていたけれど、実際には、自分が学生だったときに少し年上ではあるけれど、同じ大学生の恒夫が別の地でジョゼとこうしたドラマというか日常を繰り広げていたんだな、と今回、しんみりと感じてしまった。

本当にそれは小説の中の出来事とは全く思えず、まぎれもなく現実を生きていたとしか思えないジョゼと恒夫の、当時(というか今もだけど)の自分に比べて、ずっと豊かで大きな世界というものを思い知らせてくれて脱帽しきり。


 

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