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冬の喝采 1

黒木 亮(2008年刊 講談社)

2009/01/13 プロローグ読了、2009/01/17メモ

今度は読み応えある本格派

2008年刊講談社

「自ら育つ力」に続けての駅伝モノ、早稲田モノ。今度はこれまでのトレーニング論とは一線を画した、600頁超の分量からなる自伝的長編小説。

まだ読み始めたばかりながら、今度は期待通りの(期待以上の)読み応え。小説としての本格さが見事なゆえランニング・エトセトラでなくこちらでエントリ。

従来のスター選手本とは異なり、著者は名門高校でも高校時代の活躍もないながら、一般入試で早稲田に入学してから箱根を2度走った異色の経歴を持つ。卒業後は都銀、証券会社、商社勤務を経て、その経験から経済小説を手がけ、現在は執筆業に専念。

経歴が示すとおり、また既に定評ある経済小説をいくつも書き上げているとおり、確たる筆力を持った作家としての力量をすぐに読み取ることができる。

名アナウンサーは、的確に、劇的に情景を描写していく。

著者も同様。2区を区間新でトップに立った瀬古選手からタスキを受け取り、走り出すプロローグだけでも息を呑む描写である。ゾクゾクとする緊張感が伝わってくる。小説家だけにツボを得ている。時間が、場所が、人が、思いが ── それぞれに交錯して、単線でない構成による深みが凄い。

久しぶりの当たりモノ。「クレオール」同様の充実した分量、また「走ることについて語るときに──」同様の面白さ、で読後メモも長くならないように気を付けたいが(苦)、しばらく楽しめそう。ゆっくり味わいたい。


すでに三分の二を走りきった。
胸中に、逃げ切れるという確信が湧き始める。
次の瞬間、コース左手の防砂林が途切れた。
心の中で、あっと声を上げていた。
左手に相模湾が広がり、一面、新春の陽光を照り返していた。
風を受けてさざ波立つ海は、きらきらと輝き続けていた。
美しさに、走りながら息を呑んだ。

満足度:★★★★★


2009-01-18


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