ガープの世界(上)

ジョン・アーヴィング 筒井正明訳(1988年新潮文庫)

2011/09/27読了、2011/09/28メモ

すべて魂に属するものは夢と蒸気のごとし

「レインツリーの国」が少々ソフト過ぎるライトノベルだったので、埋め合わせに名高い名作を選択。

といって重厚な作品というのでもない。基本的にはコミカルな部分の多い小説。まるで今の世のブログのような、真面目腐った内容では肩が凝るだけで読者はつかない、少々、間抜けで自虐ギャグも入れつつ、時に思いも寄らぬ大胆な展開を見せながら、基本は笑わせる路線なのが読者を飽きさせないコツである、それを30年以上前に実践しているような感じ。

素人の僕には文学的価値がどこにあるのか分からないが、でも面白くて読ませるのは確か。面白いのは確かだが、これで著者が現代アメリカ文学の旗手としての地位を固めたというのが分からない。まあ、僕の心配することでもないのだが。

とても重要なメッセージが隠されている、それを読み取れていないだけなのだろうが、そんなことを考えずに単純に面白い読み物としてで充分。シリアスとコミカルのギャップがいい。

村上春樹が影響を受けたことがよく分かる。文体もさることながら嗜好や生き方や、といったことまで非常に直接的に感化させたろうことが伝わってくる。

ガープは度を過ごしがちな人間である。なにごとにせよバロック仕立てにしてしまうし、誇張をもって良しとしているし、その小説も極端に走る傾向がある。


ガープはその信念と同様、自己矛盾するところのある人間である。

そういえば昨年の今頃はハ・ジンの「自由生活」にいたく感動させられていて、そこではハルキ的な影響を感じるとも書いた。世界的なレベルの伝播が分かって面白い。ついでに僕はやはり「自由生活」のような武骨に真っ直ぐな路線が好きだけれど、それでは今の読者はつかないのだろう。時を経て読み継がれるという意味ではやはりこの「ガープの世界」はすごい。

今日から下巻。

上巻満足度:★★★★


 

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