二人静

盛田隆二(2010年光文社)

2011/05/14読了、2011/05/14メモ

半年越しで読了

二人静
二人静 著者:盛田隆二
価格:1,890円(税込、送料込)

日経の書評欄に引かれて図書館で借り、11月から読み始める。毎夜少しずつ読み進める面白さを感じていたが、何分結構な長編、返却期限に間に合わず。12月の福岡国際マラソン前日の土曜に返して福岡へ向かったのを覚えている。

年明け後、年度替わりの慌ただしさが落ち着いてから再度、予約。僕がそうだったようにあまり回転率の良くない(=読むのに時間がかかる)ようで、やっと順番が回ってきた。今回は休日の時間のある日だったので、残り3分の1を一気に読み終えることができた。

切り抜いていた記事はどこかになくなったが、web上のページを発見。日経の書評はWebには掲載されないが、まれに一部が載るみたいだ。作品同様に評者の弁もとても真摯。昨年でいえば「ひそやかな花園」、「自由生活」・・・等、読・朝・毎よりも日経の方が選も面白いし内容も読ませる気にさせる。

二人静 盛田隆二著 すれ違う男女、圧倒的な長篇 :日本経済新聞

誠実な生き方

32歳で独身の心優しい男「周吾」が主人公。突然に襲った父の介護に追われる中、仕事が認められて出世の道も開きかけても介護を優先するような真面目で晩生(おくて)なタイプ。そこで娘を一人で育てながら介護士の職をつとめる同い年の女性に出会う。

責任ある仕事を抱えながら、それぞれに認知証の進む父と一種の情緒障害をもつ娘を持つ二人。さらにお互い、過去の恋人と夫に深いトラウマを抱えていた。そんな二人の間にかすかな恋愛感情は芽生えても、それが小説のように燃え上がる、明るく育つような環境には程遠い。

30代前半という若さで、二人の背負う荷物があまりに重いのだ。

──と、上記書評が抜群にいい(から例外的にwebにも掲載されたのだと思う)ので、僕があらすじを述べるのもいたって野暮だが。

僕がバブル世代なだけに、こんな設定、考えにくいよなあ、という思いが最初は強かった。かつ、男も女も仕事熱心で一途で(ある意味、非の打ち所無く)出来過ぎだよなあ、とも思う。

作者は主人公周吾の同僚らに「普通」の男女を担わせる一方で、でも主人公の男女もあり得るよなあ、とも思わせる。確かに、世の中では目立たないけれど、周吾のように真面目な男も多いものだ。

父の介護をしながら結婚せずに40代を迎えることをも覚悟している、世間からは勝手に「草食系」なんて名を付けられそうだが、時代が、社会がそうさせていることも大きい。

周吾の生き方は今の世の中では報われない。それでも誠実で真摯な生き方しかできない若い彼らの姿に励まされる。著者の作品を読んだのは初めてだが、リアリズム小説の名手といわれる著者の人となりがよく伝わってくる。

希望の道すじをさぐる物語 盛田隆二さん新刊の「二人静」を語る :日本経済新聞

満足度:★★★★


 

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