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亜玖夢博士の経済入門
社会のしくみを理解する経済学的思考法の伝授物語
『スタバではグランデを買え!』の著者、吉本佳生氏の巻末解説によると、かつて著者の別作品を大学の講義にテキストとして使用していたが、品切れで使えなくなったので吉本氏自身が書いたのが『スタバ──』らしい。
今度また経済学の入門を教えるとしたら自分の『スタバ──』でなく、迷わず本書をテキストに指定する、お世辞でなく本当にそうする、と述べているのが納得できるほど、経済学入門書として楽しく読ませてくれる。
今年初めに読んだ残酷な世界で生き延びるたったひとつの方法 で
楽しく面白く読ませながらも、著者は相当に他分野多方面に材料を得て(勉強して)仕上げている。結論よりも、その、間の論の豊富な紹介が非常に面白くて、雑学にとどまらないレベルのうんちくといったところで、ちょっと賢くさせられるような読み物となっている。
と書いたけれど、あらためて著者の博学ぶり、かつ、それを真面目腐って述べるのでなく、この本に登場する主人公達のように
社会の底辺に沈む不幸な人びと
に分かるよう、彼らに寄り添うべく、暖かくやさしく、時に辛辣に、とにかく楽しく読ませてくれる。「残酷な──」に前後して読んだ、こちらは気鋭の経済学者にして正統派競争と公平感 にも記されていることが、本書ではより実践的に書かれている。
- カーネマンの行動経済学
- フォン・ノイマンのゲーム理論
- ワッツとストロガッツのネットワーク理論
- チャルディーニの社会心理学
- ゲーデルの不完全性定理
のかみ砕いた説明もさることながら、物語としての面白さが格別。つくづく著者の文才、筆力にうならされる。ベストセラー作家である著者の投資関連本、ノウハウ伝達の類を示した著作は多いけれど、それを実践できるのはやはり著者のような能力(脳力)がなければな・・・、と逆に諦めさせてくれるようなところがある。
ひとまずその楽しさだけでも味わえることで充分だが。
「古来、いかなる社会においても、新しい王が誕生する際には死と再生の儀式が執り行われてきた。死はふつう、豚や牛などの動物を屠ることで象徴されるが、古代には人間が捧げられていた。生贄を死に導くことによって、王は自らの絶大な権力を誇示するのだよ」
「それって、俺は殺されるってことですか?」
「死ななければ、生贄にはならんだろ」あっさりと、博士は言った。
先ほどのシャブの後遺症か、突然強い鬱が襲ってきた。蛇沼は手で顔を覆うと、うつむいたまま身動きできなくなった。いますぐ逃げ出せば、生命だけは助かるかもしれない。だが、新宿を離れれば自分には生きていく術がない。この街にしがみついて、シノいでいくしかないのだ。
「君の問題は、囚人のジレンマを利用することで解くことができるかもしれん」
満足度:★★★★★
2011-05-14

