音に出会った日

音と光と

昨年5月刊の新しく、自分にも関係深い本というのに全く知らずにいたが、偶然、図書館で知る。内容も知らずにいたので、最初しばらくは、生来の重度難聴で学齢期には苦労したが家族の愛に包まれて育った、やがて人工内耳を受けることになる・・・という自伝的な内容の、障害の克服本もしくは障害があっても明るく、という、よくある類の本であれば、どうしてわざわざ邦訳までされているのだろうと思われもした。

読み進めてゆくうち分かったのは、著者が成人後にアッシャー症候群と診断されて視覚をも失いゆく身の、その過程の葛藤が描かれていること、また、人工内耳手術後の音入れ時の映像が YouTube で話題になり、英国で時の人、世界中にも・・・という理由であるからのよう。

先日もここで視覚、聴覚の順に失っている若い男性の、NHK番組のことを書いたが、当然に2つを失うのは言葉にできないほどのものがある。視覚と聴覚と、どちらが、と比べるものでもないけれど、僕自身が印象に残ったのは、最後の謝辞でタイトルとされた

「光の中を一人で歩くより、闇の中を友達と歩くほうがいい」

というヘレン・ケラーの言葉で、このブログでもよく引いているように、三重苦を克服したヘレン・ケラーが1つ望むとしたらきこえをのぞんだ、それをより叙情的に表して心情に訴える言葉だなと思えたこと。本書の内容も終盤は、手術できこえを獲得した、会話や音楽を楽しめている喜びに満ちている。

その意味では、依然、盲聾のままの方には遠い存在であろうし、生後に全聾と診断されながら聴覚障害のコミュニティや手話については一切、触れられていないのも聾者には反発の声もありそう。人の生き方はそれぞれであるし、人工内耳を選択した立場ならそれが普通で、著者の個人的な立場だけであれば、それでいいと思うのだが、盲聾のメンターとしての社会的な活動をする立場であれば、きこえないことの肯定や手話や、への言及があってもよかったのにと思えた。

★★★★


 

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