2007年の本棚best3

映画や完走記とは異なり、ここは一冊の本を読むのもたやすいことでなく、さらには読後感を自分なりにまとめるのも億劫なエントリの進まないカテゴリ。

が、今年はこれまでになくエントリだけなら多数 ── になったのは一冊の本を分割して掲載という手法も取り入れたから。

ここも映画館同様、2007年の作品(新作)ではなく、2007年に読んだ本の上位3つ。

第3位 物語 チェコの歴史/薩摩秀登

物語 チェコの歴史


物語 チェコの歴史

分割エントリ。旅行前の事前学習としてより理解を強くするために一章ごとにノートしてみたもの。

しんどい作業だったが、おかげでだいぶ理解は進み、旅行中も後も見る目が変わった。嬉しい副産物としては、そもそもヨーロッパというのは地続きであるから歴史も国相互の関係も強く、一国の歴史、地理を部分的にでも理解すれば他国にもつながってゆくこと。

紀行番組等のテレビを見ていても以前より面白い。「世界ふしぎ発見」の黒柳徹子や板東さんにはかなわないが、真くんとはいい勝負になるかもしれない。

チェコという国は、この100年の間で大きく変貌した。そうした過程において、数々の、取り返しのつかない出来事も生じた。それは20世紀のヨーロッパ全体が経験した激動の歴史の一部であり、さらに大きく見れば、国民という単位によって構成される国際社会を築き上げていった近代世界の流れの一部でもある。チェコもまたチェコ人という一つの国民によって構成される近代国家へと変貌していった。


第2位 海の仙人/絲山秋子

海の仙人


海の仙人

絲山作品の物語の中に登場する女性は、多くの場合、著者自身の分身としての年齢設定であり、男性も同期や同い年であるので、同学年として非常な親近感を持って読める。彼女から見るとふがいない男性に対しては、容赦なく辛辣な言葉を浴びせることも多いのだが、いちいちもっともなことと、僕も身をすくめるようにして読んでいる。

その一方で、心の琴線に触れてホロリとさせられる場面が必ずといっていいほどにあって癒やされるのも特徴。

絲山作品はさらっとした読みやすさがいい。何度か読み返したくなる。もう一つ、本作と同点くらいに推したい「アーリオ オーリオ」の収録された『袋小路の男』も最近、文庫化されたばかり。文庫で読み返すのに適した作家といえるかもしれない。

こんばんは。

今日、私は新しい星を作りました。私だけにしか見えない星です。たったの3光日の距離にあります。名前はアーリオ オーリオ。

私は、哲おじさんに手紙を書くときカーテンをそっと開けて、星を見ます。手紙を書いて、ポストに出して、おじさんに届いて、おじさんが読むまで3日かかります。そのとき、アーリオ オーリオの光が届くのです。

なんと! 私の手紙は光の速さと競争しているのだ!


第1位 わたしを離さないで/カズオ・イシグロ

わたしを離さないで


Neve Let Me Go

米国の「タイム」が選ぶ文学史上のオールタイムベスト100に、刊行したその年に選ばれる快挙をみせたというように、僕にとっても数年に一本、あるいは十年に一本の小説になりそう。

思春期の読者に与える『ライ麦畑・・・』のように、胸深くに沁みこんで「永遠」という言葉を残してゆく物語。


「あの日、あなたが踊っているのを見たとき、わたしには別のものが見えたのですよ。新しい世界が足早にやってくる。科学が発達して、効率もいい。古い病気に新しい治療法が見つかる。すばらしい。でも、無慈悲で、残酷な世界でもある。そこにこの少女がいた。・・・」



 

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